【コラム】大規模化と成果報酬型給与で医師の多様な働き方を実現する │田村 豊

田村 豊 医療法人社団めぐみ会理事長

今回は、多摩市をはじめ、都内で複数の大型診療所を展開する医療法人社団めぐみ会の田村豊理事長。意欲を高めるための成果主義型の給与体系や多様性を認める職場環境の提供など、医師が働きやすさと働き甲斐を持てる仕組みに関する話を聞いた。

中山 俊
田村 豊

『最新医療経営PHASE3』2024年7月号(発行:日本医療企画)

目次

成果報酬型給与で やりがいを高める

中山 田村クリニックでは消化器内科や循環器内科、呼吸器内科、糖尿病内科、血液内科、腎・高血圧内科、脳神経内科、一般内科と、内科だけでも毎日15人程度の医師が外来を担当し、脳神経外科や泌尿器科、乳腺外来もあります。大病院と遜色ない体制ですが、このような大型診療所をつくられた目的は何ですか。

田村 患者さんの要望に応じるためです 。日本では、かかりつけ医が何でも診て、必要に応じて病院の専門医につなげるという医療体制の構築が進められています。一方で患者さんは、身近で専門医の診療を受けられる環境を望んでいます。それも365日。こうした患者さんのニーズを追求したら、さまざまな専門医が在籍する大規模診療所に行き着いたのです 。

結果論ですが、医師の働き方にもメリットがあります 。外来のコマ数が多いため、一般的な週5日勤務をはじめ、「週4日勤務、16時まで」など、多様な働き方ができる場を提供できるのです 4。非常勤ですが、「週3日、午前中だけ」「土・日だけ」といった働き方をしている医師もいます 5。なお、給与は、仕事量に応じて支払う成果報酬型にしています 。

中山 成果報酬型の給与とのことですが、成果はどのように評価されているのですか。

田村 「毎月の収入実績」です 。大雑把に言うと、その医師が算定した診療報酬から人件費や設備費、光熱費、医薬品や材料費、法人運営費などの概算を引いた額を支払う仕組みになっています 。医師一人ひとりの貢献度が給与にフェアに反映されるよう、評価システムはかなり細かくなっています 。

たとえば胃カメラの検査の場合、検査を行った医師には検査実施フィー、オーダーした医師にはオーダーフィー、結果を説明する医師には説明フィーといった具合に分けています。

私よりも高い報酬を得ている医師も数人いますし、成功した開業医の年収にも引けを取らないでしょう 。また、最低保証給もあり、公的病院の基本給以上にはしています 。

成果報酬型の給与は、多様な働き方を実現するうえでも有用です 。たとえば、高い給与を定額で保証すると、経営者としては「これくらいの数の患者さんを診てもらう必要がある」というラインを設けざるを得ません 。そんなことは強要したくないし、「患者さんとじっくりと向き合いたい」という思いも尊重したい。成果報酬型給与にすれば、自分のやりたい診療スタイルか収入かを、ある程度は選べるようになります 。

医療人事部が 働きやすい環境を調整する

中山 医師一人ひとりの貢献度の評価や給与の計算は大変な作業になると思いますが、どのようにされているのですか。

田村 詳細な評価基準とそれを計算するシステムに加え、医師を専門に担当する「医師人事部」の職員が現場の評判などを踏まえて算出しています 。医師人事部では給与計算のほか、「もう少し診療時間を減らしたい」といった不満を受け止め、その解消や希望の実現に向けて私と交渉したりする“コンシェルジュ的な仕事もします 。また、現場職員からその医師への不満の声がある場合などは、間に入って改善を促します 。医師人事部は、全員が気持ちよく働ける環境づくりに動いてくれています 。

中山 医師としても理事長には直接話ををしにくいし、医師人事部はありがたい存在ですね。どのようにしてこの部署の設置を思いつかれたのですか。

田村 医師に辞められたのがきっかけです 。理由を聞いたら、「土・日診療が増えたのが負担だった」とのこと 。私としては、依頼したら「はい」と答えていたので安心していたのですが、「負担だったけど断れなかった」というのです 。「医師のフォローアップを専門に行う人が必要だ」と、10年ほど前に医師人事部をつくりました 。

中山 最後になりましたが、4月から始まった「医師の働き方改革」についてはどのような考えをお持ちですか。

田村 「働き方改悪」だととらえています 。今の働き方改革は、ワークシェアで失業者を減らすための政策としては有効でしょう 。しかし、今は働き手が少ないため、一人ひとりが今まで以上に頑張る必要があります 。働き方を制限した結果、GNPも円も下がりました 。今後は外国人労働者が減り、労働者不足でさらに国力は落ちていくでしょう 。

医師に関しては、研修医が十分な研修時間を確保できなくなることが問題だと考えています 。やる気のある人にとっては、病棟で勉強するのも難しくなっています 。労働時間を制限するのもいいけど、同時に「限界までやりたい」という働き方も認めるべき 。早急に再検討してほしいと考えています 。

中山 確かに「もっと働いて稼ぎたい」「プライベートを重視したい」など、自分の希望する働き方を選べるのがベストです 。そういう意味では、貴法人の医師の働き方は理想に近いと思います 。

本日はありがとうございました。

田村豊
医療法人社団めぐみ会理事長


1956年生まれ。1980年、京都大学法学部卒業後、石油会社に2年間勤務。89年、岐阜大学医学部卒業後、三井記念病院、国立がんセンター(現・国立がん研究センター)などに勤務。94年、田村クリニック開業。以降、都内に複数の大型診療所を展開 。96年、医療法人社団めぐみ会設立 。2012年から22年まで、一般社団法人多摩市医師会会長を務める。

(『最新医療経営PHASE3』2024年7月号 発行:日本医療企画)


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