実家の診療所とこれからのキャリアの展望 後編|静岡県立静岡がんセンター|森川昇 先生

医師の新しいキャリアや働き方にフォーカスする「D35」は、実際に医師の可能性を広げられている先生にインタビューし、可能性を広げた先にある景色、そして、そこに至るまでの障壁や葛藤についてお話を伺っています。

今回は、医師10年目でもう一度レジデントとして呼吸器内科に向き合う、森川 昇先生(静岡県立静岡がんセンター/呼吸器内科レジデント)にインタビューを行いました。

後編では キャリアとどう向き合っていくかについて、じっくりとお話を伺いました。

>>前編はこちら

目次

ロールモデルのないところでキャリアを作っていくには?

Antaa 加藤

一方で、キャリア形成は家族との話し合いだけで解決できることは難しいと思います。そういった場合には、どのような方に相談されたり、悩んだ時の向き合い方はどのようにされていましたか?

森川先生

そうですね、私はちょっと相談することが下手くそなのかもしれないです。いろんな人の意見を統合するのって案外大変ですよね。自分に足りないものは何かとか、自分がしたい事が何かとかを考える事が重要なのかも知れませんね。

森川先生

あと、荒先生 ってご存知ですか。被ってはないんですけど、同じ音羽の呼吸器出身ということでちょっと仲良くさせてもらってたことがあって、関西の勉強会で荒先生に来
てもらって講演してもらったことがあって、その内容がキャリアについてだったんですよ。

そこで「キャリアの7割は偶然で決まる」っていう話があって、キャリアっていうのは轍で、目標を見つけていくのも大事ですけど、結局自分が通ったところが結果的に轍になり、それがキャリアになるよという話でした。

ですので、将来のキャリアを見据えるってよりは、結局、自分が取ったところがキャリアになるんだっていうところと、7割方は偶然で決まるっていうところがあるんで、キャリアに関してそこまで悩むよりは、その時々で自分が置かれてるところで、たまたま目についた話があったところに行くっていうところが、結局キャリアとして成り立っていく方法なのかなって思ったりしてます。

ロールモデルのないところでキャリアを作っていくには、結局その時々に偶然な出会いとか、考えとか、自分のその時の状況とか、それに合ったものをただ選んでいくっていうところが結果キャリア形成になっていくんじゃないかって勝手に思ってて、そこまで深刻に悩まずに、結局は偶然で決まるもんだから、もっと気軽に考えていこうかなって感じになりました。

Antaa 加藤

たしかに、悩み込んでしまうよりも、まず自分が何をしたいのか、やりたいことに何が足りないのかを考えながら、キャリアとライフステージの変化に向き合っていくことが何より大切だということですね。
森川先生のお話を聞いていると、いろんな偶然を形にされてきて、自分のキャリアを築いてきたんだなと感じました。

キャリアに悩むことは、結局は自分自身と向き合うこと

Antaa 加藤

最近、学習者の立場を再度経験した事で、将来の森川先生のキャリアにはどのような影響があると思われますか?

森川先生

正直わかりません。自分自身もまだどうなっていくのか悩んでいるところです。

Antaa 加藤

その辺りに関連して、ご家族との話し合いなど、生活面でのバランスや働き方についても話されるのでしょうか。

森川先生

うーん、あまり…。そうですねー、家庭との両立は…、難しいですよね。
いや、子育てで奥さんにかなり負担をかけてしまっているという意識もありますし、妻は薬剤師ですが、もっとやりたいことがあったのではないかと思うこともあります。でもなるべく妻と話し合うようにはしています。

Antaa 加藤

家庭との両立はなかなか難しいですよね。奥様も薬剤師でいらっしゃるということで、同じ医療従事者として森川先生の考えに共感して将来的になにか一緒に取り組んでいただける可能性もあるのは素晴らしいなと思いました。

森川先生

そうですね、ちょっと前に将来診療所を自分がやるかもしれないという話を奥さんに伝えています。彼女はそれを理解してくれており、自分がそのキャリアに合わせた逆算的な準備も進めていることも理解してくれています。結婚する際にも、僕は奈良に帰って実家の診療所を継ぐかもしれないという事も伝えて結婚しました。

Antaa 加藤

ライフステージとキャリアの変化の過程をいろんな角度でご家族と話し合っていける関係はとても良いですね。
最後に、キャリアに悩む同世代の先生方へ、一言メッセージををいただけたら嬉しいです。

森川先生

自分がいつも心に留めているのは、キャリアに悩むことは仕方ないことだということです。キャリアに悩むことは、結局は自分自身と向き合うことなのだと思っています。自分に何が足りないのか、何をしたいのかという自問自答をしながらキャリアを見つけていくことは、自分自身の成長につながると考えています。ですので、キャリアに迷っていることは、成長のチャンスがあると捉えて、前向きに考えていくことが大切だと思います。

実際、私の中でもこれからの進み方はまだはっきりしていません。将来についての妄想や構想もありますが、今まで通り市中病院で長く呼吸器内科を担当することを選んでいるかもしれませんし、地域で内科診療だけを専門に行う診療所の医師になっているかもしれません(笑)。

Antaa 加藤

今日はお忙しい中、ありがとうございました。

森川先生

こちらこそ、ありがとうございました。

>>前編はこちら

森川 昇 呼吸器
近畿大学卒業。洛和会音羽病院で初期研修。現在、2019年市立奈良病院で呼吸器科医として勤務。臨床研究にも積極的に参加し医学教育研究を進めている。

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