痛感した在宅医療の課題と、パートナーシップ制度を活用した在宅診療所開業へ 後編│あかみね在宅診療所│赤嶺洸太 先生

医師の新しいキャリアや働き方にフォーカスする「D35」は、実際に医師の可能性を広げられている先生にインタビューし、可能性を広げた先にある景色、そして、そこに至るまでの障壁や葛藤についてお話を伺っています。

今回は、千葉県柏市で、在宅医療を行う赤嶺洸太先生(あかみね在宅診療所/院長)にインタビューを行いました。
後編では、赤嶺先生の在宅診療所開業とパートナーシップ制度について、じっくりとお話を伺いました。

>>前編『4歳から目指した外科医としてのやりがいと働き方のジレンマ』はこちら

目次

病院からみた地域の在宅医療の不足と課題

Antaa 加藤

赤嶺先生ご自身が振り返ってみて、医師になられてから特に印象的だった出来事や大きなターニングポイントはございますか?

赤嶺先生

ホームページにも書いているのですが、大腸がん末期の患者さんを受け持っていた時のことが非常に印象に残っています。私が手術を担当した患者さんで、術後に再発してしまい、見つかった時にはもう手の施しようがない状態だったんです。
その患者さんは本当に家族に愛されている方で、娘さんやお孫さんまでが寄り添っていました。自宅から病院に通い、痛み止めを使いながら頑張っていましたが、最終的には自宅で過ごせなくなり、千葉西総合病院に入院してきました。毎日ご家族が面会に来ていて、ご家族といる時は本当に楽しそうでしたが、ご家族が帰った夜に私が回診に行くと、とても悲しそうにされていて孤独感が際立っているようでした。「家に帰りたいな」という言葉もボソッと聞こえ、その時のことが非常に印象的でした。結局、その方は家に帰ることができずに病院で亡くなってしまったのですが、もし在宅医療が整っていたら、ご家族と一緒に家で過ごせたのではないかと考えさせられる出来事でした。その時、在宅医療が不足しているという思いが芽生え、私の大きなターニングポイントになったのかもしれません。

Antaa 加藤

赤嶺先生が病院にいて、外科医として地域を見渡したとき、在宅医療はどのような状態だったのでしょうか?

赤嶺先生

その時期の在宅医療は本当に不足していて、特に私たちの地域では、亡くなる前に自宅に帰ってもらうということがなかなか叶わないという現実を突きつけられていました。

Antaa 加藤

コロナ前後の頃、柏市や松戸市周辺では在宅診療や訪問診療を行うクリニックが増えていて、求人なども増えていたので、在宅医療が右肩上がりの地域だなと印象があったのですが、実際の現場では全然足りていないという状況だったということですね。

赤嶺先生

足りていませんでしたね。柏市や松戸市の中心地には意外と多くの在宅クリニックがあるのですが、中心とその周辺では大きなギャップがありました。柏市と松戸市の中間のラインには在宅医療を提供する医師がいないので、少し離れると在宅医療のお医者さんが来てくれないという感じでしたね。

Antaa 加藤

ちょうど柏市と松戸市の中間となるスポットで開業されたんですね!

在宅診療未経験からの挑戦を後押しした、パートナーシップ制度

Antaa 加藤

特に在宅診療での経験をせずに白青会のパートナーシップ制度で開業を決意したポイントはどこでしょうか?

赤嶺先生

ひとつ目の理由は、準備期間が1年間あったことです。その間に、外科医の仕事をしながら週に1回在宅診療のアルバイトもしていたので、1年間の在宅診療の経験でやっていけるだろうなという思いがありました。完全にゼロからスタートするのは尻込みしていたと思いますが、準備期間があったことで一歩踏み出すことができました。

赤嶺先生

もうひとつは、医療法人白青会(以下、白青会)のサポート体制もしっかりしていて、理事長や他の医師、営業の方々がこのパートナーシップ制度に非常にコミットしているという熱量を感じたことです。自分が開業しても、「診療以外の部分の不安は今後しっかりサポートしてくれる」という安心感が強かったことが踏み出せたきっかけですね。

Antaa 加藤

準備期間の1年間についてですが、先生の中である程度時間軸を決めてのサポートのお話を進められていたのか、それともコミュニケーションを取りながら進めていかれたのでしょうか?

赤嶺先生

前者ですね。一番最初に連絡を取ったのが2023年の2月か3月で、ちょうど開業する1年ちょっと前でした。最初の段階で「開業する時期を決めよう」という話になり、1年間かけて準備して2024年の4月に開業しようと明確に決めました。それに基づいて、勉強会のペースや物件選びなどのフローチャートを白青会で決めてくれたので、それに沿って全く不足なく準備を進めることができました。

Antaa 加藤

開業準備期間中に勤務先へ退職の相談も行うのは大変ではありませんでしたか?

赤嶺先生

そうですね、かなり止められました。上司からは「まだ早すぎる」「外科としてやることがあるだろう」などと言われました。ただ、自分の中では先生たちの言葉は大切だとは思いつつも、自分の人生を決めるのは自分ですし、上司の先生たちの時と今は時代も変化していますし、開業する先生たちの年代も若くなってきています。在宅診療所の開業は体力が必要だと思っていたので、まだ体力がある若いうちに挑戦すべきことだと考えていました。

Antaa 加藤

強い想いで退職されたわけですね。開業されて数ヶ月経った現在ですが、実際に開業してからを振り返ると、イメージしていた通りの開業になっていますか?

赤嶺先生

かなりイメージ通りかなと思っています。家族との時間も増えて、在宅診療の患者さんや患者さんの家族とのかかわり方もイメージしていたものと近いので、自分が思い描いていた在宅医療のかかわり方ができていると実感しています。

医療法人白青会の想いへの共感と納得感

Antaa 加藤

在宅医療としての働き方ですと分院展開のクリニックの院長などを考えたことはありますか?

赤嶺先生

それは全く考えていませんでした。Webセミナーで出会ったその日に白青会にメールをして、他の組織などには特に連絡を取っていなかったので。

Antaa 加藤

それは直感的に決めた感じですね!

赤嶺先生

そうですね、かなり直感的に「これだ!」と思った感じです。
内容は、剛先生(いしぐろ在宅診療所・石黒剛先生)の話がメインで、在宅医療の仕組みや開業の方法について説明されていました。また、開業医と雇われ院長と勤務医との違いについても触れられていました。特に印象に残ったのは、年俸制ではなく、パートナーシップ制度では経営権が自分にあり、自分が頑張れば報酬も上がるという部分を強く推していて、非常に魅力的でした。やはり、開業しようとしている先生たちは報酬を気にしていると思うので、本当にストレートに突っ込んだお話は、わかりやすくて魅力的に感じましたね。

Antaa 加藤

開業を考えている先生は、ご自身が借金することを一番最初にイメージしているのではないかなと思うんです。パートナーシップ制度は、コミュニケーションを重ねていくことで共感や理解が得られるものだと思うのですが、初見だと、暖簾分けでもなければ、フランチャイズでもない、「白青会にどんなメリットがあるんだろう?」「本当に良い話なのか?」という疑問が湧くと思うのですが、そのあたりはどう感じましたか?

赤嶺先生

それはめちゃくちゃありましたね。確かに最初はかなり怪しさはありました。「なんでそういうことをするんだろう?」「白青会には何のメリットがあるんだろう?」ということを理事長と話す前までは思っていましたが、セミナーの後に理事長と2時間ほどお話しして、白青会としてはまずはお金ではなく、理事長自身が始めた在宅医療を広げたいという思いの強さを感じたんです。

赤嶺先生

その仲間がこの後どんどん増えていって、仲間同士で院長しか分からない悩みや苦労を話し合える関係を築いて、さらには「家族などが集まって年に1回、みんなでキャンプができたら楽しいよね!」といった話を理事長がイキイキと話されていて、「あぁ、本当にこういう思いなんだな!」と感じられました。

赤嶺先生

 また、借金の部分についても、白青会名義で融資を受けるので、私の個人名義での融資はないと明言されていました。そのため、開業しても自分に損が出る可能性はほとんどないだろうなと考えましたし、経営がうまくいかなかったとき以外は、お金を取られるといった金銭的に大きな負担がかかるイメージもなかったので、怪しさがだいぶ払拭されました。お金の面に関しては、むしろあまり気にしていないというところに共感を覚えましたね。

Antaa 加藤

ちなみに、赤嶺先生と剛先生共通の話題で「Dr.コトー」のお話があるとのことで、コトー先生は外科もされているので、外科を選ばれた赤嶺先生と地域医療を選ばれた剛先生との巡りあわせを感じました(笑)
先生は「Dr.コトー」をいつ頃見られていましたか?

赤嶺先生

「 Dr.コトー」は、たまたま共通の話題でしたね。初めて見たのは大学生のときとかで、小さい頃ではないです(笑)

「在宅に移るときは、あかみね在宅へ」地域に無くてはならない存在を目指して

Antaa 加藤

今後の展望や次の目標があれば教えてください。

赤嶺先生

私の初期の目標は、柏市や流山市、松戸市に「あかみね在宅」という名前を認知してもらうことでした。半年が経過し、それが達成できてきているという実感があります。病院から直接患者さんの紹介も増えてきていますし、「在宅に移るときは、あかみね在宅へ」という流れができている段階だと思うので、初期の目標は達成できていると思います。

赤嶺先生

次の段階は、少し規模を拡大したいと思っています。現在は職員が3名なのですが、患者さんのキャパシティが埋まってきているため、事務さんや看護師さん、医師を増やして、あかみね在宅で提供できる在宅医療をもう少し広げていきたいなと考えています。
今、まさに事務所の移転を考えていて、そのサポートを白青会が行ってくれています。物件の契約や保健所への届けなども、開業当初とかわらずサポートしてくれています。


\赤嶺先生 登壇ウェビナー/
2024年10月24日 20時配信

赤嶺 洸太|消化器外科、在宅医療

鹿児島大学医学部卒業。千葉西総合病院にて初期研修、専攻医プログラムを経て、外科専門医を取得。2024年に医療法人白青会 パートナーシップ制度を利用して、あかみね在宅診療所を開業。

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